八重山の車社会  作成 2009.1.10 

 八重山、特に石垣島は、典型的な車社会の島です。 本土と違って電車はなく、那覇と違ってモノレールもなく、かといって頻繁にバスが運行されているわけでもありません。 しかし、夏場に、あの強烈に照りつける日差しの下を歩いて移動するのは、自殺行為ともいえるでしょう。
 また、石垣島は意外と大きな島で、市街地もまた郊外も坂道・アップタ゜ウンが結構ありますので、移動手段としては、必然的に車を使うこととなります。

 ところが、島という独特の環境下でつくられた車社会は、本土とは異なったいくつかの特徴を有しています。 あなたが、旅行者として、もしもレンタカーを借り車を運転する場合には、こうした特徴をよく理解した上で運転して頂きたいと思います。 参考になるものを以下に紹介しておきます。

(1)日本一速度制限がしっかりと守られた地域である。

 本土から来た観光客等がレンタカーを借り、初めて石垣島の道を走りだして最初に驚くのが、何といっても島の人の運転する車のスピードの遅さでしょう。 島の人達は実にのんびりと車を走らせています。
 恐らく、日本で唯一、速度制限がしっかりと守られた地域と言えるかと思います。(勿論、警察が見張っていない条件下での比較ですよ。)
 警察(交通課)にとっては、まさに法遵守の理想の姿とも言えますが、ネズミ捕り業務によって地方財政を多少なりとも潤す臨時収入を期待することのできない(絶望的な)地域とも言えるでしょう。
 石垣島で車を運転した人の間でよくされる笑い話としては、「あまりにスピードが鈍いので前の車は故障しているのかと思って抜いたら、その前の車も、その前の車も同じような速度だった」なんて言うのがあります。 島内で運転経験された人であれば結構納得のいく話かと思います。
 一般道路を100km/hでぶっ飛ばすことのできる北海道に比べると、石垣島での平均速度は約1/3程度の30〜40km/hとなりますが、決してそれにイライラすることなく、あくまでも「ここは八重山」と割り切って運転をするようにしたいものです。石垣島を一周するとしてもせいぜい3時間もあれば十分なので、「狭い島、そんなに急いでどこへ行く?」の気持ちを持って運転しましょう。気持ちの平静が保てて30〜40km/hで走れるようになったら、あなたも一人前の島のドライバーと言えるでしょう。
 なお、市街地から離れた場所にある集落内を通行する時は、路地の陰から子供たちが飛び出すこともあり(子供の人口構成比率は都会よりも遥かに高いので)、特にスピードを落とした通行をするようにしなければなりません。 また、貴重な野生動物の保護の(轢き殺さない)ためにも、くれぐれもスピードは出し過ぎないように注意しましょう。
(2)速度が遅いからといって、必ずしも安全運転をしているわけではない。

 スピードが遅いから安全運転をしているかと思うと、それは全くの別問題です。遅いだけで周囲の車は全く見ていません。
 ほかにも、子供がいっぱい乗って右に左に蛇行している車とか、交差点で曲がる時にウィンカーも点けなければ、外側大回りでコーナーを駆け抜けたりと、ほとんど自由奔放な走りぶりを目の当たりにすることができるでしょう。
 妙に端を走ってるので、抜けということか?と思って近づくと急に中央に寄られたりすることもあります。また、前の車の窓から、空き缶やゴミが飛んでくることさえあります。交通マナーという言葉とその意味は、まだまだ普及していないと思った方がよいでしょう。
 その他、対向車(運転者は凡そ島外者)が無茶な追い越しをしてこっちがブレーキを踏まされることなどもよくある出来事です。

 石垣島では誰も急いではいないものの、決して安全意識が高いわけではないことも頭に入れておかなければなりません。

(3)老人に道交法は通じない。

 島には子供が多いのはご存知だと思いますが、加えて老人も多いのです。そして彼らの若かった頃の交通手段は、もしかすると水牛車だったかもしれません。少なくとも道交法が通じる相手ではないと心得ておくべきでしょう。
 歩行者が老人の場合、左右を見ないで横断してくるし、間に合わないタイミングで横断を始めてくるしで、とにかく彼らにとってはルールはないのです。人だと思うのではなく、巨象(ぶつかるとこちらがひどい目に合う)くらいに思って、行過ぎるまでは車を停止させておくくらいの余裕を持った運転をするべきでしょう。
 次に運転者が老人の場合、彼らは今日のような自動車教習所に通ったわけではなく、実地試験のみで免許を取得したでしょうから、何よりも運転実務が優先しています。また、免許を取ったのはアメリカ占領下の右側通行の時代かもしれませんし、もしかすると道路に左右の区別をする必要のなかった時代から車に乗っているかもしれません。従って、老人が運転する車であることに気づいたら、優しく見守りましょう。そしてチャンスがあれば追い越すなり、道を変えるなりしてできるだけそばに近づかないのが最も利口な運転方法と心得ましょう。
 加えて、最も危険なのが老人のバイクです。これには決して近づいてはいけません。何が起こっても車を運転している方が悪者になるのがこの国の法です。バイクがいつどのように倒れても、決して接触しないだけのクリアランスを十分に確保した運転に心掛けましょう。

(4)酔っ払い運転フリーゾーンかも?

 かつて八重山の社会においては、酔っ払い運転が犯罪だという意識は非常に希薄なものでした。(全国、田舎に行けば何処も同じでしたが。)
 特に道交法よりも、より自然が身近な脅威であった離島においては、「ハブに噛まれると危ないから車で飲みに行こうね」という世界であったことは記憶に新しい話ですし、また、「飲んだ後の、帰りは酔っ払ってまっすぐ歩けないから、車で帰ろう」という世界だったのです。
 元々、舗装のされていない、低速でしか走ることのできない道路であった頃には、時々車ごと田んぼに落ちたりアダン林に突っ込んだりするような事故はあったものの、死者や重傷者を出すようなことはなく平和な日々だったのです。これはそんなに昔の話でありません。
 しかし、島も都会化し、道路も舗装・整備され、高速で走れる車が販売され、観光客も増えてレンタカー利用者も増えると、離島でも酔っ払い運転で死亡事故が起きたりするわけで、そんな悠長なことは言っていられなくなったのです。
 日本の最南西端に位置する八重山諸島内でも、当然のことながら酔っ払い運転は厳禁です。

運転者 酒酔い運転 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
酒気帯び運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
酒類の提供・車両に同乗 運転者が酒酔い運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

 道交法の改正により、罰金は大幅アップしています。1回の罰金で八重山に複数回の旅行ができることを考えても、交通ルールはしっかり守りましょう。「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」は八重山でも重要です。なお、石垣島であれば、運転代行業者もありますので、どうしても車を動かす必要のあるときにはそちらにお願いしましょう。

(5)道路には寝ている歩行者がいるかも!

 色んな迷惑な歩行者が居ますが、一番怖いのは道路で寝ている人です。寝ているので正確には歩行者ではありませんが、道路に寝る前は歩行者だったはずです。笑い話のようですが、意外とこの人数は結構あなどれないほどなのです。
 お家に辿り着けなくて道路で寝てしまう、しかも車の前で寝てしまう。それを気付かずに車が踏んでゆく・・・。
 喜劇ではありません、悲劇です。
 本土ではまずあり得ない話ですが、八重山で交通事故を起こした時にそれを言ったとしても、何の言い訳にもなりません。こうした地域性も考え全てに備えた上で運転する、それが八重山で運転するときの必要条件です。それが真のゴールドカード保持者に結びつきます。

(6)自転車には要注意。

 学校での指導が良くなったせいか、随分と自転車に乗るマナーは向上してきたものの、またまだ無謀な自転車を見ることができます。
 特に一番の自転車愛好者である石垣島の中学生は(男女とも)とても度胸がよく、左右を見ず、減速もしないで交差点に神風○○○のごとく突っ込んでくることがあります。それまで怖いと感じたことが無いのか、それとも南国的・楽天的な性格で怖かった記憶も容易に忘れることができるのか・・・
今まで生き残っているのが不思議に思えるときもあります。
 とにかく自転車との接触は被害が大きくなるので、決して自転車に当てないよう気を付けましょう。

(7)駐車禁止の取り締まりは厳しい。

 ネズミ捕り業務によって多少なりとも地方財政を潤すことができないこともあってからか、石垣島で異様に多いのが駐車禁止の取り締まりです。市街地周辺は短時間でも捕まります。
 悪質なものを取り締まるのなら良いのですが、そうでないものもビシビシと捕まります。地元住民だけでなく、レンタカーを借りている観光客も含め、公平に捕まりますので注意しましょう。
 かと言って、そこらにある月極め駐車場に勝手に車を停めると、契約者からクレームが来ることになりますので、他人に迷惑をかけるようなことは止めましょう。

 市街地であれば、有料駐車場に停めてもせいぜい1時間100円程度です。

 まだまだ色々ありますが、八重山・石垣島の車社会の一端を紹介しました。本土とは違う車社会がありますので、注意して走ってください。
 そして、できれば極力車に乗らずに、もっと歩き、走り、自転車に乗って、豊かな自然を満喫してみようではありませんか。


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