八重山方言(ヤイマムニ) 作成 2016.03.05


 八重山諸島には、沖縄本島や宮古諸島などとは違った独特の言語体系(方言)があります。これを八重山方言(ヤイマムニ:スマムニ)と言います。今日、この八重山方言を話す人は約4万5千人ほどいるそうです。
 八重山方言は、一般的に日本語もしくは琉球語の「方言」として扱われていますが、八重山または国際機関に於いては独自の「言語」として扱われることがあります。この八重山方言も最近では沖縄県の他の地域と同様に方言の「ウチナーヤマトグチ化[*]」が著しく、2009年2月にユネスコにより、消滅危機言語の「重大な危険」と分類されています。

 ところで、八重山方言は一つではありません。と言うより八重山方言と言うのは無くて、本来はそれぞれ異なった島(石垣、竹富、黒島、小浜、西表、波照間、鳩間、新城、与那国)言葉を使っていたにすぎません。しかもその島言葉の差は著しく、お互いに通じにくいほどのものでした。加えて、もっと厳密に言うと集落によって違う言葉を使っていて、例えば、石垣島でも字石垣、字大川、字新川、字豊野城4ヶ字でそれぞれ違う言葉が使われていたのです。(話せる人の数も減り失われつつある言語ということで、あえて過去形で表現しましたが、不適切かもしれません。)
 ここでは一般的に石垣島で通用する方言を紹介します。(もしかすると、間違いがあるかもしれませんが・・・?)


 [*] 戦後の沖縄に成立・広まった新しい日本語の方言、いわゆる沖縄弁

1.挨拶

大和口 八重山方言 備考
ありがとう にぃふぁいゆー 丁寧な場合は「みーふぁいゆ」
「しかいとぅ・みーふぁいゆー」とは、「大変有難うございます」

本島では「にふぇーでーびる」
いらっしゃい おーりとーり 石垣島では「おーりとーり」、鳩間島では「おーりとろーり」
黒島では「わーりたぼーり」、小浜島では「わーりたぼり」
波照間島では「んぎしたおーりょー」、与那国島では「わーりー」
因みに、宮古島では「んみゃーち」、沖縄本島では「めんそーれ」
おはよう、こんにちは、こんばんわ くよーなーら
おやすみ ゆくひょーり
お元気ですか みしゃーろーるんさー
とても元気です ちゃーがんじゅー
召し上がりなさい おいしょーり
とてもおいしい まるまーさん
おなかいっぱい ばたぬちた
久しぶり みーどぅーはーそーなー
ごめんなさい ぐりしみほーりゃよー
お気をつけて きーしきたぼーり
本当? あんじー?
はい おー
いいえ あーい

2.家族と家

大和口 八重山方言 備考
お父さん びげー
お母さん ぶねー
うや
おじいちゃん あっちー
おばあちゃん あっぱー
高齢の男性を親しみを込めて呼ぶ言い方 おじぃ
高齢の女性を親しみを込めて呼ぶ言い方 おばぁ
子ども ふぁー
「すくすく育つたくましい子」の意味 ていだぬふぁ 「太陽の子」と書く
まぁ
わたし ばー
あなた わー
お姉さん ねーねー 自分の姉妹を呼ぶだけでなく、年上の女性を呼ぶ時にも使う。
通常は、「昭恵ねー」のように名前の後に「ねー」をつけて呼ぶ。
お兄さん にーにー 自分の兄弟を呼ぶだけでなく、年上の男性を呼ぶ時にも使う。
通常は、「晋三にー」のように名前の後に「にー」をつけて呼ぶ。
双子 たーちゅー
やー
家族 やーにんじゅ
本家 やーむとぅ
満産祝 まんさんいわい 出産の祝いで産まれてから30日後くらいに親戚、友人、知人を招いて開くお祝い。
風車(かざぐるま) かじまやー 数え年97歳の盛大なお祝い。歳を取ると童心に返ると言われ子供のおもちゃの風車を持って集落をパレードする。
八重山伝統の赤瓦の家 かーらやー
コンクリートの家 スラブやー 「スラブ」とはコンクリートのこと
「後ろ(北側)の家」 しんや
「前(南側)の家」 まんや
「西隣の家」 いんや
「東隣の家」 あんや

3.身体

大和口 八重山方言 備考
ちぃぶりー
髪の毛 あかまじぃ
ひげ ぴにぃ
みん
うび・うやび
みー
ふちぃ
てぃー
お尻 ちび
ぱん・ぱい
かーぎー

4.自然

大和口 八重山方言 備考
あーりぃ、あーんた
西 いりぃ、いーんた
ぱい、はい
にしぃ
太陽 てぃーだ、てぃだ
つくぃ
ふす
天の川 てぃんがーら
銀河 うーがー 大きな川の意?
北斗七星 うふなぶし
北極星 にぬふぁーぶし に=子=北の、ふぁ=方角を示す、ぶし=星の意味。
方角は、北から子丑寅宇・・・で表している。
スバル むりかぶし
南十字星 はいむるぶし 現在はこの意味で使われているが、これは近年の造語で本来の意味とは異なるもの。
明けの明星 さかまぶし
いん、とぅもーる
かじ
南風 ぱいかじ 主に夏場に吹く南の風
新北風 みーにし 夏の終わりをつげる北風、冬場に吹く季節風の北風
ふぅむ、くむ
天/空 てぃん
そら
かーら

5.人

大和口 八重山方言 備考
八重山 やいま 沖縄方言では「えーま」
八重山出身の人 やいまんちゅ
沖縄本島 おきなわ 八重山では沖縄県という概念は薄く「おきなわ」と言うと沖縄本島のことを意味する。 これは琉球王朝の昔から文化圏が違っていたものに由来すると思われる。
沖縄本島出身の人 うちなんちゅ
内地(沖縄県以外の日本)のこと ないち
やまとぅ
沖縄県以外の日本本土のことは内地「ないち」と呼ぶ。 高齢者は「ないち」と言わずに「やまとぅ」と呼ぶことも多い。
内地出身の人のこと やまとんちゅ/ないちゃー
八重山に暮らす内地の人のこと 島ないちゃー
島人、島で生まれ育った人 しまんちゅ
海人 うみんちゅ 漁師の意
畑人 はるさー 農作業をする人
お利口さん、良い子 まいふなー 子供を褒める言葉
馬鹿 ふらー もともと「ふりむぬ」が馬鹿と言う言葉で、それが変化して「ふらー」になった。
わんぱく、おてんば やまなぐー
体の弱い人 びーらー
酔っ払い びーちゃー 「びーらー」と混同しないように注意
怠けてる人 ふゆうまー
いつも眠そうにしてる人
いつも眠たがる人
にーぶやー 少し「怠け者」のようなニュアンスで使われる事もある

6.動植物

大和口 八重山方言 備考
いん
まや、まゆ
ねずみ うやんちゅ・おいざ
ヤギ ひーじゃー 「ぴびじゃ」・「ぴぴざ」とも言う。
いず・いじゅ・いゆ
んま
おー 「うむざー」とも言う。
かまい
カラス がらしぃ
海老 じゃんなま
カニ かんなま
ぱぴる 与那国では「はびる」。 あやみはびる=ヨナグニサン
がざん、がじゃん
ゴキブリ とびーらー
ハイビスカス あかばな
グァバ(野生) ばんする
ゴーヤー ごーや 八重山では「やー」と伸ばさない

7.形容詞

大和口 八重山方言 備考
うれしい さにしゃん
面白い・楽しい うむっさん
きつい なんぎ
美しい、綺麗、可愛い あっぱりしゃん 小浜島を舞台にした「ちゅらさん」と言うドラマがあったが、美人と言う意味の「ちゅらさん」「ちゅらカーギー」は沖縄本島の言葉で、八重山の言葉ではない。
「美しい」の意 かいしゃ 「美しゃ」と書く 
悲しい かまらさん うちーぐち:なちかさぬ
嬉しい さにしゃん
恥ずかしい ばっかいしゃーん
かわいい んぞーさーん
美味しい まーさん、うまはん 「まーさんどー」= 美味しいよ
暑い あっつあぬ
冷たい ぴーしゃぬ
大きい まぎー

8.副詞

大和口 八重山方言 備考
とても、いつも ちゃー
ずごく、とっても まーる
大変、大事 でぇーじ
お腹が減った やーさぬ
満腹 ばだんてぃたー
どんどん、たくさん ばんない
(ペースが)ゆっくり よんなよんな
辛い、面倒、苦労、迷惑なこと、大変、しんどい、厄介 なんぎ 難儀の意
眠たい、ウトウトする にーぶい
怒る イラつく わじる
怠ける サボる ふゆうする

9.名詞(単語)

大和口 八重山方言 備考
おしゃべり ゆんたく すまむに: 島言葉、方言
冗談 ばなんぎぃ
元気 がんじゅう 「ちゃーがんじゅう」は「とても元気」の意味。
あっちこっち あまくま
ゴミ チリ チリ箱、チリ袋
ぐし
島酒=泡盛 しま 石垣島には6軒の酒造所があるが、それぞれに個性的な銘柄を出している。ストレートや水割りのほか、シークワーサーを絞って入れたり、ジュースやコーヒー、ミルク、ウコン茶、サンピン茶で割ったりして飲む。
お茶 ちゃー
お菓子 くわーす
おやつ ちょっき 「茶うけ」がなまったもの。「フルーツちょっき」や「丸ちょっき」、「貝ちょっき」がある。
馬鹿、間抜け ふらー
お金 じん
お菓子 くわーす
冗談 ぱなんぎぃ
酔っ払い びーちゃー
まぶい
まぶやー
あっちこっち あまくま
こっぱり
ガソリンスタンド、SS、給油所 きゅうゆしょ これは方言ではないが、内地ではあまり馴染みの無い言い方である。八重山ではSSとかガソリンスタンドなどとは言わない。
世果報
「平和で幸せな世の中・世界」の意味
ゆがふ これはニライカナイから神様(ミルク神)が訪れると恵みの雨が降り作物の豊穣をもたらし平和で幸せな世になると言い伝えられていることに由来している。せっかくの行事や祭りの時に雨が降ると人々は「世果報雨が降った(恵みの雨)」と言って気持ちを盛り上げる
魔物 まじむん 言い伝えによると、「まじむん」は道をまっすぐ進む性質があり、道の突き当たりにくるとそのまま突き当たりの家の中に入ってきてしまうそうで、そのため人々は道の突き当たりに石敢當という魔よけの石を置き「まじむん」の進入を防いだ。「まじむん」は石敢當に当たると砕け散ると言われている。
打ち上げの飲み会 ぶがりなおし 「ぶがりた」は疲れたと言う意味で、「ぶがりなおし」は疲れ治しということ。
お祭や祝宴の終わりに三線に合わせて踊る祝いや喜びの踊り もーやー 沖縄本島のカチャーシーと同じ。
踊り方は、両手を頭の上に上げて窓を開けたり閉めたりするような動きをしながら体を三線のリズムに合わせて揺する。

10.八重山的言いまわし等

大和口 八重山方言 備考
びっくりした時
「参ったな」「なんてこった」「えぇ〜」「うそー」
あがやー 英語の「オー・マイ・ガッド」と同じニュアンスの言葉。 驚きや困った時に発する。
「そうだよね」「そうなんだ」「おっしゃる通り」「分かった分かった」などの相槌 だっからよー 八重山言葉の極めつけ。 相手の言葉に対する肯定的な意味合いだがとっても曖昧な相槌。
決して「だから何?」なんて考えてはいけない。
「〜出来る」の意 〜きれる 食べきれる?
自分が「〜します」「〜しますね」の意 〜しようね/〜しましょうね 相手に同意を求めたり一緒にやりましょうと誘っている訳ではない。これからしようとしている自らの行動を宣言しているような意味。
疑問文の語尾  「〜なの?」 〜ばぁ?

「役所に行くばぁ?」=「役所に行くの?」

いらいらする  わじわじする 「わじわじ」は相手に対しての感情の表現であり、
「いらいら」はあくまでも自分自身に向かっての感情の表現である。
素晴らしい、上手、上手い、最高、質の良い、など良いもの全般に使う。 じょーとー 上等と言う表現は広い意味で使われる。
数の数え方:
 「ひとり」「ふたり」

 「ついたち」「ふつか」
 「ひとつ」「ふたつ」

「いちめい」「にめい」
「いちにち」「ににち」
「いっこ」「にこ」
数え方は基本的に「いち、にい、さん、・・・・」が使われる。
お土産屋さんで「サータアンダギーを六つ下さい」と言うと、店の人に「六個ね?」と聞き返されたりする。
忘れないで ばすきなよお 空港線のバス停に「ばすきなよお入口」というのがある。
那覇に行く 沖縄に行く
 

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